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『 ひそむほど、みちみちる 』作品解説

第70回 東京藝術大学 卒業・修了作品展にて展示発表しました「ひそむほど、みちみちる」について、解説させていただきます。





「ひそむほどみちみちる」

プールに住む人魚を描きました。

この人魚は童話の「人魚姫」のように人間に恋をして地上に上がろうとする姿ではなく、

また、怪物の「セイレーン」のように美しい歌声で人を惑わせて襲ったりするような人魚ではありません。

オリジナルとして描いています。

この人魚はこのプールの中で一生を終えます。

ここでは、咲いて枯れる花々や、時間によって見える月や太陽、舞めぐる生き物たちとの出会いがあります。

人魚はここでの新たな出会いを楽しみに、満ちた日々を生きていきます。

この絵のテーマは、「自由と常識」です。

人魚やプールはテーマのためのシンボルとして描いています。



前提として、ここからお話しする「常識」というものは人それぞれに違いが有るものとします。 人は常識の中でしか行動できない、生きることができない。「自分の常識」に沿って、自分の思う「常識のある人」として生きています。

しかし、その「常識」が広がれば、常識に囚われながら、常識が広がる前よりも自由に生きていけます。

私自身が、人からの言葉、経験、出会いをきっかけに、

自分の常識が広がり、常識が広がったことで自由を感じたことから、この作品を描きました。

「プール」は常識の囲いを象徴しています。

海や湖ではないのは、常識は自分が勝手に定めているものである、という考えから自然ではなく、人工物であるプールを描いています。

「人魚」は自分の常識の中で、自分の考える「常識のある人」らしく生きようとする人を象徴しています。「人らしい」という点で人の形を持つ人魚を描いています。

「水」は自分の「常識」のフィルターであり、解釈の場です。

水面には人魚が見た月が反映されています。絵の鑑賞者には、実際の月がどのような形、色をしているかはわかりません。人魚にはあのように見えています。

経験はその人のフィルターを通して咀嚼されます。そしてその人の常識として消化されます。人魚の常識は彼女なりに広がっています。

また、水は映すものや入り込んだものの形を曖昧にすることから、常識の曖昧さ(人それぞれ違うこと)を象徴しています。

「植物や生き物、月」は出会いや経験を象徴しています。

人魚は今夜見る月に微笑んでいます。


人は自分の常識に囚われて生きています。それでも出会いや経験を経て、新しく得た、知った自由の中で最大限生きて、自分の常識を広げ、さらに新しい自由でも生きていきたい、というメッセージがあります。




作品解説は以上となります。

拙い解説ではございますが、お読みいただき誠にありがとうございました。